論文詳細
敬心・研究ジャーナル第5巻 第2号
コミュニケーションと心の健康
―自尊感情と心的外傷後成長の視点から―
要旨
本稿の目的は、コミュニケーションと心の健康の関わりを考察することで、良好なコミュニケーションが心の健康を維持し増進する仕組みを明確化することである。コミュニケーションについては、二人の個人間のコミュニケーションに限定して議論した。その際、二人の関係を捉える枠組みとして、向き合う関係と並ぶ関係に整理できることを示した。また、心の健康としては自尊感情と心的外傷後成長を鍵概念として議論した。日常生活における心の健康は、自尊感情の安定によってもたらされると考えられる。そして、事件や事故などに遭遇した時に生じる心的外傷と、それに続く心的外傷後ストレス障害から心的外傷後成長への道筋を考えるときに重要な役割を果たすものとして、安定した自尊感情の果たす役割について指摘した。結論的に言えることは、良好なコミュニケーションを維持増進することが、平穏な日常生活においてのみでなく、困難な状況の中でのもがき苦しみの渦中にあっても極めて重要なものとなるということである。
Communication and Mental Well-Being:
from the Viewpoints of Self-Esteem and Post-Traumatic Growth
Abstract
The aim of this paper is to understand that better communication leads to mental well-being. It is broadly accepted that, in general, good communication leads to good mental well-being. In this paper we discuss inter-personal communication, specifically, face to face and parallel relationships. In particular, parallel relationships, often featuring intersubjectivity, can result in high basic self-esteem. Then basic self-esteem can sustain post-traumatic growth through difficult life struggles. Finally, we suggest that healthy communication is essential not only for a calm daily life but also for overcoming difficult life events.