論文詳細

敬心・研究ジャーナル第5巻 第1号
掲載ジャーナル
第5巻 第1号(ISSN2432-6240)
掲載ページ
P.059~P.066
発行日時
2021年06月01日
林健造の幼児表現指導論の背景に存する人間学
著者
吉田直哉
所属機関
大阪府立大学
抄録

本稿は、美術教育論を専攻した林健造の芸術観の基底にある彼の人間観を明らかにすることにより、彼の幼児表現指導論の基本的特質を明らかにしようとするものである。彼の人間観は、自身の美術教育論の骨格を成すものであった。それゆえ、彼の美術教育論・表現指導論は、人間学として構築されていたということができる。林の美術教育の前提は、あらゆる子どもの表現が、子どもの内面に源泉を有するものであるということであった。それゆえ、あらゆる美術教育は、子どもの内面からの情感の表出を、美術の形式・方法論を獲得することによって、より精緻かつ伝達可能性の大きな表現へと高めていくことにあるとされた。美術の形式・方法論については、教師が子どもに伝達可能・教育可能な領域であるが、その前提となっている内面における情感の奔騰は、そもそも教師による外面からの関与が不可能な領分であるという点において、子ども自身による創発性に委ねられている。この点において、林は、子どもの内面を、子どもの活動・発達の根源と見なす児童中心主義の思潮の中に位置していたということができる。

キーワード
創造美育(創美)協会、新しい絵の会、表出と表現、感性
Hayashi Kenzo’s thought on art education in early childhood
Author
Yoshida Naoya
Organization
Osaka Prefecture University
Abstract

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